寝台特急「北斗星」の深き沼 その4 | 夜汽車の汽笛への憧情

寝台特急「北斗星」の深き沼 その4

毎度ご覧いただきありがとうございます。

 

久々に毎日更新していましたが、書き溜めていた部分が尽きた&内容が少しガッツリになるのでここからは少しペースが落ちる予定です。

長い目でお付き合いいただければ幸いです。

 

ここまで導入の経緯や車両増備の過程について書いてきましたが、ここからは実車の解説や模型自体の加工について書いていきます。一連の投稿を通じて、一見華やかに見えた「北斗星」の「深み」について知っていただければ幸いです。

 

今回から数回にかけて「北斗星」車両の深い沼について語るうえで、その背景となる歴史や基礎知識について書いていきます。

まずは、「北斗星」の歴史からおさらいしていきましょう。

 

 

第二部・寝台特急「北斗星」の歴史

 

第一章.豪華寝台特急「北斗星」誕生

 

時は昭和63年。時代は国鉄分割民営化直後。バブル景気真っ只中で、JR各社も「脱国鉄」で様々な工夫・アピールを行っていました。そんな中、国鉄時代から長期間かけて推進してきた巨大プロジェクト、青函トンネルが完成し、ついに本州と北海道がレールで結ばれることになったのでした。

 

寝台特急「北斗星」はそんな背景の中、このトンネル開通を契機として登場した上野-札幌を結ぶ寝台特急列車です。

名目上は常磐線経由で上野-青森を結んでいた寝台特急「ゆうづる」の延長運転ということになっていましたが、「ゆうづる」が常磐線経由だったのに対し、「北斗星」は東北本線経由となりました。

 

運行はJR東日本とJR北海道が受け持ち、定期列車2往復、季節列車1往復の3往復体制でスタートしました。

運行する車両もJR東日本と北海道でそれぞれ受け持つことになり、1・2号はJR北海道が5・6号はJR東日本が担当。季節列車の3・4号はJR東日本担当となりました。

運行開始当初の編成は以下の通りでした。

 

北斗星1・2号(JR北海道担当)

号車番号   1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
設備 電源車 B寝台 B寝台 ロイヤル・
デュエット
ツインDX ソロ・
ミニロビー
食堂車 B寝台 B寝台 B寝台 B寝台

 

北斗星3・4号(JR東日本担当)

号車番号   1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
設備 電源車 B寝台 B寝台 B寝台 B寝台 B寝台 B寝台 B寝台 B寝台 B寝台 B寝台

 

北斗星5・6号(JR東日本担当)

号車番号   1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
設備 電源車 B寝台 B寝台 ロイヤル・
ソロ
ツインDX ロビーカー 食堂車 B寝台 B寝台 B寝台 B寝台

 

電源車込みで11両の編成で、編成内容が3往復ですべて異なっていることが判ります。

輸送力列車の3・4号は別として、1・2号と5・6号で連結順序や設備が若干異なっているが面白いところです。

 

史上初の一般客が乗れる本州-北海道直通列車(注:戦後まもなく、駐留軍用の連絡船を使った直通列車があった。また、貨物や荷物列車は連絡船を使った直通運用があった。)ということもあり、担当するJRもこの「北斗星」にたいする意気込みは大きなもので、用意する客車は従来から使っていた24系客車でありながら、様々な改造や工夫がこらされて、他の24系使用列車と大きく異なるものとなりました。その中でも特筆されるのはやはり、従来の夜行列車の設備とは一線を画す「ロイヤル」の存在です。

 

 

一人用でありながら、スペースと専用のシャワールームに大きなベットのほか、テレビモニターや一人掛けソファ、机等を有し、ビジネスホテル並みの設備を誇っており、「北斗星」を豪華列車としての位置づけを不動のものにしました。

JRとしては広告塔のつもりであったようですが、時代はバブル景気真っ只中。金のあるところには金があるもので、1列車にたった2部屋の「ロイヤル」はプラチナチケットと化したのでした。

また、ロイヤル以外にもラウンジスペースであるロビーカーや、ゴージャスな雰囲気を醸し出しコース料理も提供される食堂車「グランシャリオ」、B寝台の1区画分のスペースを二人で使用できる個室となっているツインDX、A寝台ながら個室となっているソロ・デュエットが連結されて、華やかなラインナップとなり人気を集めました。

 

種々の豪華設備と青函トンネルの開通ブームも手伝って「北斗星」の利用率は上々で、JRは早くもテコ入れすることになるのでした。

 

機関車は

上野~青森間はEF81

青森~函館間はED79

函館~札幌は非電化区間ありかつ勾配区間を有するため、DD51が重連で担当する事になりました。

EF81は電化方式が切り替わる黒磯駅をスルー運転できるように対応されたものが充当され、寝台特急をイメージする流れ星マークがあしらわれました。

 

 

第二章.「ロイヤル」追加、列車は常時3往復体制へ

 

運行開始後の利用実態をフィードバックしたJR各社はさらなる攻めの戦略に出ます。

1989年3月改正でモノクラスだった3・4号を定期列車に昇格します。さらに、JR東日本担当の5・6号はロイヤル付きの車両を増結し、電源車を含めて12両の体制となるのでした。

一方、この時点では1・2号は通り抜け対策としてソロ・ロビーと食堂車の連結位置が入れ替わるのみにとどまっています。なお、モノクラスの輸送力列車は「エルム」と名乗り、臨時列車として運行されることになります。

編成は以下のようになります。

 

北斗星1・2号(JR北海道担当)

号車番号   1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
設備 電源車 B寝台 B寝台 ロイヤル・
デュエット
ツインDX 食堂車 ソロ・
ミニロビー
B寝台 B寝台 B寝台 B寝台

 

北斗星3・4号(JR北海道・JR東日本が交互に担当)

号車番号   1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
設備 電源車 B寝台 ロイヤル・
デュエット
ロイヤル・
ソロ
ツインDX 食堂車 ロビーカー B寝台 B寝台 B寝台 B寝台 B寝台

 

北斗星5・6号(JR東日本担当)

号車番号   1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
設備 電源車 B寝台 ロイヤル・
デュエット
ロイヤル・
ソロ
ツインDX 食堂車 ロビーカー B寝台 B寝台 B寝台 B寝台 B寝台

 

新たな3・4号はJR東日本とJR北海道が1日おきに担当することになり、編成の内容はJR東日本編成と統一されました。

JR東日本は「ロイヤル・デュエット」が、JR北海道は「ロビーカー」と「ロイヤル・ソロ」が新たな車種となりラインナップに加わります。また、予備を確保するため、従来車種についても増備が行われましたが、1年間の使用実績に基づいて細かな改良や仕様変更が行われており、このことが模型的な観点での「沼」を深めることになりました。

また、両社ともB寝台車を増強し、JR東日本は遊休となっていた24系24形が応援に入り、JR北海道は14系寝台車を改造して24系24形を揃えました。こうして、「北斗星」客車のラインナップはますます増えていったのです。

 

一方、この年にJR東日本は「次世代の寝台車」というキーワードで「夢空間」というコンセプトカーを誕生させます。概要は第一部の繰り返しになりますが、「展望食堂車」「バー・ラウンジカー」「豪華寝台車」からなる構成で、あくまでコンセプトカーであり、当面運用は考えないとされていました。しかしながら、この豪華車両が今後の「北斗星」と大きなかかわりを持ってくることになります。

 

余談ですが、このころJR西日本が「トワイライトエクスプレス」と誕生させます。当初はクルーズ用として製造されますが、追加で編成が用意され、半定期的に大阪-札幌間を結ぶ列車となりました。「トワイライトエクスプレス」は「北斗星」以上の設備を誇り、「北斗星」と共に北海道夜行の華となるのでした。

 

 なお、北海道内を担当する機関車のDD51は、この頃から国鉄時代と同じ塗装から、北斗星客車に合わせた青を基調とし、EF81とは異なる流れ星マークが描かれる様になっています。

 

第三章.さらに豪華になる「北斗星」

 

観光列車としての側面も持つ「北斗星」人気は順調で、JR北海道も「ロイヤル」増結のためテコ入れを図ってきます。

 

1990年ダイヤ改正では、以下のような編成になりました。

 

北斗星1・2号(JR北海道担当)

号車番号   1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
設備 電源車 B寝台 ロイヤル・
デュエット
ロイヤル・
ソロ
ツインDX 食堂車 ソロ・
ミニロビー
B寝台 B寝台 B寝台 B寝台 B寝台

 

北斗星3・4号(JR北海道・JR東日本が交互に担当)

号車番号   1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
設備 電源車 B寝台 ロイヤル・
デュエット
ロイヤル・
ソロ
ツインDX 食堂車 ロビーカー B寝台 B寝台 B寝台 B寝台 B寝台

 

北斗星5・6号(JR東日本担当)

号車番号   1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
設備 電源車 B寝台 ロイヤル・
デュエット
ロイヤル・
ソロ
ツインDX 食堂車 ロビーカー B寝台 B寝台 B寝台 B寝台 B寝台

 

JR北海道が増備した「ロイヤル・ソロ」は3・4号運行開始時に用意したものと基本的には同じであるものの、細かな変更点が発生しています。また、ツインDXの増強車両として14系寝台車を改造しましたが、JR北海道独自の仕様が盛り込まれた非常に個性的な車両となりました。

一方JR東日本編成については変化がなく、この体制が今後長期間続くことになるのでした。

 

1990年でもう一つ大きなトピックスとしては、「夢空間」車両が北斗星のラインナップに加わった事でしょう。

 

 

繁忙期に定期列車とは別に、石勝線に乗り入れる臨時列車「北斗星トマムスキー」のほか、「夢空間北斗星」号としても走行しました。

編成は夢空間車両と北斗星客車を組み合わせたもので、様々な編成が組まれました。

こうして「北斗星」はさらに華やかになっていくのでした。

 

さて、JR北海道担当の北斗星はさらに進化していくことになります。

B寝台車を改造して、1997年までに順次ソロやデュエットを連結。最終的には全車が個室という偉業を成し遂げます。

 

1・2号の最終的なスタイルはこんな編成になりました。

 

北斗星1・2号(JR北海道担当)

号車番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11  
設備 Bコンパート デュエット デュエット デュエット ソロ ソロ・
ミニロビー
食堂車 ツインDX ロイヤル・
ソロ
ロイヤル・
デュエット
Bコンパート 電源車

 

諸々の事情により1991年に編成順序が逆になっています。(これは3・4・5・6号も同様)

Bコンパートは普通のB寝台に仕切りを設けて4人用個室として利用できるというもので、通常は普通のB寝台として扱い、グループで1区画撮った場合に車掌に申告して区画を締め切るようにできるというものでした。

なお、ソロとデュエットについてはギリギリの数のみ用意され、検査などで離脱した際は普通のB寝台を使用していました。

 

このころが「北斗星」の黄金期だったと言えるでしょう。

 

 

長くなったので、次回に続きます。