寝台特急「北斗星」の深き沼 その7 | 夜汽車の汽笛への憧情

寝台特急「北斗星」の深き沼 その7

毎度ご覧いただきありがとうございます。

 

前回のB寝台編は何気に形式が多く、形式全体で共通の話、会社別で共通の話などがあり、綺麗にまとめるのが難しくなかなか難産でした。

いやぁ、文章って難しいですねw

しかも、調べれば調べるほど判る新たな真実・・・。「北斗星」の沼は深い・・・・w

 

さて、今回から「北斗星」の華である優等寝台車の登場です。

 

第二章 ツインDX

 

「ツインDX」とは、二人用の個室A寝台の愛称名です。

二人用の区分室を持った優等寝台は意外と歴史が古く、戦前の木造客車時代から、20系寝台車まで存在します。国鉄が合理化至上主義になっていた時代の14系や24系では一度途絶えたものの、改造車ながらこの「北斗星」で復活したことになります。

ただし、20系までの時代は二人用区分室はバラ売りで、いわゆる「相部屋」になることも多々ありました。「ツインDX」は基本的に部屋売りであり、その点が大きく異なります。

そのため、本ブログではその点を区別するため、部屋売りの区分室を「個室」、ばら売りは「区分室」と記述しています。

さて、「ツインDX」は紛れもなく「二人用個室」です。実は「北斗星用」でありながらも登場は国鉄時代で、分割民営化にむけて青函トンネル開通後に運転する予定だった「北海道連絡特急用」として用意した設備だったりします。

車両落成後は暫定的に「ゆうづる」で使用され、「北斗星」誕生により晴れて本来の目的である「北海道連絡特急」に使われることになりました。

その後「北斗星」好評のため定期3往復体勢となるにあたり、JR北海道・東日本それぞれで増備車が誕生しています。

 

「ツインDX」に使用される車両は以下の通りです。

・オロネ25形500番台

・オロネ24形500番台

・オロネ25形550番台

 

このうち、オロネ25形500番台は国鉄時代に登場した車両、それ以外がJR化後に誕生したものとなっています。

それでは、それぞれの車両について詳しく書いていきましょう。

 

・オロネ25形500番台

上に書いた通り、国鉄末期にオハネ25形を改造して誕生した車両です。

見た目は一見オハネ25形とあまり変わっていませんが、寝台側は上段用の小窓が新設されているところがB寝台時代と異なっています。

 

こちらが通路側です。パッと見はオハネ25そのものですが、室内に個室用の仕切りがあり、扉と窓がズラリと並んでいるのが判ります。

 

こちらは寝台側です。やはり見た目は普通のオハネ25とよく似ていますが、窓の上に小窓があるのが判ります。模型は100番台改造車なので窓が小さいですが、0番台改造で窓が大きいものも存在します。

 

 
室内はオハネ25形の寝台区画1つを二人用個室に改めたもので、単純にB寝台の倍のスペースを占有できる、ゆとりのある設備となりました。

寝台は赤系統のモケットが貼られたゴージャスな雰囲気の2段寝台で、下段はクッションを跳ね上げることでソファーとして使用可能です。

(写真の模型では上段は省略されています。また、ソファー状態が再現されています。)

小さなテーブルやロッカー、オーディオ設備にビデオが視聴できるテレビモニターも付いていますが、戦前以来優等区分室寝台についていた洗面台はついていません。通路側にもカーテン付きの小窓がついており、通路を通して外を見ることも可能です。

 

デッキ寄りにある元二人用の寝台区画は機器室となり、外から見ると常にブラインドが下げられた状態になっています。

 

 

さて、オハネ25形500番台は全部で6両で501〜503がJR北海道、504〜506がJR東日本に引き継がれました。兄弟とも言えるこれらの車両ですが、所属会社によって別々の運命と辿っています。

 

・JR東日本

JR東日本に引き継がれた504〜506は「北斗星」運行開始前は「ゆうづる」で、運行開始直後は5・6号に使用され、3往復化後は3・4号の東日本担当編成と5・6号で活躍しました。1999ねんの2往復化後の3・4号、2008年の1往復化も引き続き使用された他、「夢空間」と組んで走る姿も比較的多くみられました。2004〜2007年の閑散期には編成中2両連結されたこともあります。

2015年の定期列車終了後、臨時列車となってからも2両連結で活躍し、「北斗星」運行終了まで活躍しました。運行終了後は種車からを含めた車齢が高いこともあり、全車廃車となっています。

 

形態的には全てオハネ25形100番台改造車で、客室側の窓が小さいタイプです。運行終了までほぼ変化はなく、非常口跡の形態は各車とも水切りなしとなっています。Hゴムの色は506のみ方向幕が黒になっているようです。

 

模型はTomixの「JR東日本仕様」各セットや「夢空間」セットには大抵含まれていて、比較的入手は容易です。古い製品ではHゴムが黒でしたが、最近の製品では灰色に改められているようで、実車に近くなりました。KATOは1往復化後をプロトタイプにしたDX編成セットに含まれています。505のナンバーが付いていますが、例に漏れずHゴムは黒色ですw

 

・JR北海道

JR北海道に引き継がれた501〜503は、「北斗星」運行開始前はJR東日本に貸し出す形で「ゆうづる」に運用され、「北斗星」運行開始直後は1・2号。3往復化後は1・2号と3・4号の北海道担当編成で活躍しました。1999年の定期2往復化後も引き続き活躍しますが、「夢空間」と連結したり、2004〜2007年には閑散期にJR東日本に貸し出されて、東日本編成に組み込まれた事もあるようです。ところが、2008年の1往復化により運用を失い、車齢も高いことから廃車となりました。解体はされず、ミャンマーへ旅立ったようです。

 

形態的には、501のみオハネ25形100番台改造車、502,503は0番台改造車となっていて、客室側窓の大きさが異なっています。それ以外は国鉄時代の改造という事もあってか、帯や非常口跡などは東日本車と形態に違いはありません。Hゴムは全車とも灰色だったようです。

ただ、トイレ窓についてはJR東日本車と大きな差があり、JR東日本車が廃車までトイレ窓はそのままだったのに対して、JR北海道車は詳細時期不明ですが、少なくとも2001年までには埋められている事が判明しています。

 

模型の方は、一応大窓、小窓タイプ共にTomixからモデル化されています。大窓タイプは瞬殺アイテムだった「3・4号北海道仕様セット」に含まれており、バカみたいな高値でオクに出品されているのを見かけます。入手難易度は高いと言って良いでしょう。小窓タイプは古い製品の「北海道仕様セット」に含まれていました。こちらも少し入手は難しいみたいです。意外ですが、KATOからも大窓車が旧製品でモデル化されています。1988年の運行開始当初の仕様でHゴムも灰色ですw

 

・オロネ24形500番台

オロネ24形500番台は1989年の定期列車3往復化に伴って増備されたJR東日本の「ツインDX」の増備車です。1両のみの存在で、地味な外観ながら「知る人ぞ知るレア車両」となっていました。

形式が示す通り、他の「ツインDX」車と改造種車が異なっており、オハネ24形からの改造車です。正真正銘24系24形というわけですねw

室内等の仕様は基本的にオロネ25形500番台と揃えられたため、運用は他のツインDX車と共通で、完全に混用されていたようです。

運行開始直後は3・4号の東日本編成及び5・6号で活躍、2往復化後も3・4号で活躍しました。また、「夢空間北斗星」やその他団臨での使用実績もみられます。1往復化後及び臨時化後も引き続き使用され、「北斗星」終焉まで活躍しました。「北斗星」運行終了後は他のツインDX車共々、廃車・解体されています。

 

上にも書いた通り、客室内はオロネ25形500番台と揃えられており、2段ベットやロッカー、ソファー、ミニテーブルにAV機器など、基本的に設備は同じです。

 

形態的にはオハネ24形改造であるため、客室側の窓は大きく、JR北海道にいたオロネ25 502,503に似ていますが、元乗務員室・更衣室部分は窓が埋められており、この点において外観が異なっています。また、通路側については、非常口だった部分が窓も含めて完全に埋まっているのがオロネ25形500番台と異なっています。HゴムについてはJR化後の改造とあってか黒となっており、模型メーカーの期待を裏切らない姿となっていますw

 

さて、模型の方はレア車だけあってどこからも製品化されていませんでしたが、Tomixから今年8月発売予定の「東日本仕様セット」で初登場となります。地味な車両ながら、よく見るとちょっと違う、編成に入っていると思わず「ニヤり」としてしまう事間違い無いでしょうww

自分も購入予定ですので、入手した際にはアップしようと思いますw

 

・オロネ25形550番台

オロネ25形550番台は1989年の定期列車3往復化に伴って増備されたJR北海道の「ツインDX」の増備車です。24系25形を名乗ってはいますが、JR北海道得意?のオハネ14形からの改造です。1両のみの存在ですが、「苗穂工場の匠」により生み出されたその破天荒な外観から、存在感の大きい珍車となっていましたww

 

登場は3往復化から少しタイムラグのある1990年からで、室内はこれまでの運用実績からJR北海道独自の工夫がもたらされ、他のツインDX車と大きく異なる事から「ニューツインDX」などとも称されていました。また、運用も東日本と共通になることがない、1・2号専属となっており、定員だけは他のツインDX車と揃っていることと、1両だけのため検査時を除いてオロネ25形500番台と交互に運用されていました。このため、団臨での使用や「夢空間」との連結実績は確認できていません。(おそらく無かったと思われます。)

かなり特殊な車両となっていた事から、JR北海道担当の優等寝台車が運用を失う2008年の1往復化により余剰となり、廃車後ミャンマーに旅立って行ったのでした。

 

さて、肝心の室内ですが、こんな感じでした。

 
 

B寝台個室の「デュエット」を大型化したような一階と二階が交互配置された内容になっており、寝台は他の「ツインDX」が2段寝台となっているのに対し、中二階建ての並行配置となっています。二階席は室内中央に階段があるスタイルとなってます。ツインDXとしては唯一、室内に洗面台が設けられており、他よりグレードが上がっています。ただし、構造上ベッド部分は天井が低くなっているので、乗り心地の評価は分かれたようです。AVコンソールやビデオモニターがあるのは他のツインDX車と同じですが、その位置は独特のものでした。

 

形態的にも非常に特徴があります。

 

 

こちらは通路側です。一見大人しそうな「北斗星色のオハネ14形500番台」に見えます。非常口部分は窓も含めて埋められています。この辺りは他の「北斗星」の14系改造車と共通した部分です。Hゴム付きのドア窓も14系500番台由来のものです。しかしながら、特別感を漂わせる「アルコン帯」(JR北海道のジョイフルトレインである「アルファ・コンチネンタル・エクスプレス」を端緒とする、細い4本の横帯と縦の帯の入った金帯)やドア横にある「北斗星エンブレム」が誇らしげです。

 

そして問題の客室側です。中二階構造で1階席と2階席があるため、「デュエット」の親分のような独特の交互配置・・・で済んでないですねw

2階席は狭窓が二つ並ぶ構造に対し、一階席はオハネ25形100番台もびっくりの平たい窓に加え、部屋中央の高天井部分にはご丁寧に天窓が付いています。これだけ珍妙な窓配置の客車は、同じJR北海道の「はまなす」用のカーペット車以外みたことがありませんww

ちなみに、最初にこれをみたときは「なんじゃこりゃ!?」でしたw小さい窓がツラツラ付いているのでソロやデュエットの類かと思ったら、調べてみたらA寝台で2度ビックリでしたw

トイレ窓は完全に埋められています。これはJR北海道の「北斗星」車両の一部にみられる特徴で、JR東日本車は基本的にトイレ窓は存在しています。

Hゴムは分割民営化後の改造にもかかわらず灰色のままです。同期に改造された「ロイヤル・ソロ」車は黒ゴムなので謎ですね。

 

さて、模型の方はあまりのキワモノぶりに長年モデル化されていませんでしたが、去年冬にようやくTomixから製品化されました。「Tomixさん。よくぞ作ってくれた!」という感じですww

流石に1両だけの珍車だけあって、よく調べられていて破綻がありません。最近のTomixさんらしい秀作と言えるでしょう。

見ての通り、まだ入線整備が追いついておらず真っ新な状態ですが、入線整備を行った際には改めて紹介したいと思います。

 

区切りも良いので今回はここまで。

今回は快調に筆が進みましたwwww

 

次回は「ロイヤル・ソロ」車について書いてみようと思います。