寝台特急「北斗星」の深き沼 その14 | 夜汽車の汽笛への憧情

寝台特急「北斗星」の深き沼 その14

 
毎度ご覧いただきありがとうございます。

 

仕事が忙しくなって記事を書く時間がとれなくなり、かなり間が開いてしまいました。

 

今回は車両紹介シリーズのフィナーレとして「北斗星」ファミリーの中でも異端車にしてスーパースターだった「夢空間」客車について書いてみようと思います。

 

第九章 「夢空間」というスペシャル

 

 

JRが民営化直後の高揚感に沸き、バブル景気も華やかなりし頃、1988年にフジテレビの企画で本物のオリエント急行客車が遠路はるばるヨーロッパから来日し、日本国内を走りました。その衝撃はおおきく、JR東日本はオリエント急行客車に影響されて「次世代の寝台客車」をテーマにコンセプトカーとして「夢空間」客車を製造しました。

 

「展望食堂車」、「ラウンジカー」、「豪華寝台車」の3両構成とし、従来ではありえない豪華装備をふんだんに取り入れ、車両・運用・サービスの限界を探る車両となっていました。

 

あくまでコンセプトカーと言うことで当面は展示用で、列車としての運用の予定はないものの、将来「北斗星」客車との組んでの運用も考慮して24系25型がベースとなりました。


1989年に横浜博のパビリオンの一つとしてデビューした後はしばらく運用はなく、展示会などでの展示のみにとどまっていましたが、1990年秋にようやく列車としてデビューを果たし、以降は「北斗星」客車と組んで繁忙期の「夢空間北斗星」や「北斗星トマムスキー」号を中心に、多客臨(一般の人が利用可能な臨時列車)や団体専用列車などで活躍しました。

ちなみに、「夢空間」と組んだ客車はJR東日本の車両だけでなく、JR北海道の車両も結構な頻度で使用され、1往復化後の「北斗星」に先立って異社間混成編成が実現されています。

 また、スーパーエクスプレスレインボーなどのジョイフルトレインと組んでクルーズ列車として運転されることもあり、ジョイフルトレインと定期運用客車の中間的な独自のポジションを築いていきました。現在のクルーズトレインの走りと言っても良いかもしれません。

 

「夢空間」を使った「夢空間北斗星」や「北斗星トマムスキー」等は「北斗星」の臨時列車として半ば繁忙期の常連となっていましたが、1999年に「夢空間」の運用実績を取り入れて製造された新型客車のE26系「カシオペア」が登場すると、2003年を最後に多客臨での運用を終えています。

その後は団体専用となりましたが、引き続き「北斗星」客車と組んで使用されました。「夢空間」を使ったクルーズも何度か企画されて、北海道方面だけでなく、関西方面や山陰まで足を延ばしています。副次的な効果として、東日本専業だった「北斗星」客車や、北斗星用のEF81が関西遠征をする風景も見ることができました。


しかしながら、試作車なるがゆえの扱いづらさか、日本各地を行脚して走行距離が伸びた故か、「老朽化」を名目に車齢19年目の2008年に早くも引退してしまいました。

ラストランは「北斗星」用の解放B寝台を多く使った編成で運転され、「北斗星」ファミリーの一員だった「夢空間」らしい終わり方といえそうです。

「夢空間」車両の量産車は登場しませんでしたが、ここで得られた経験が現在のクルーズトレイン(カシオペア・四季島・トワイライト瑞風・ななつぼし 等)に生かされています。


それでは、「夢空間」の各客車についてみていきましょう。

・オシ25 901

 

 

「夢空間」を象徴する前代未聞の展望食堂車です。車体はグリーンで、ブルートレイン客車とは一線を画していました。

大きな窓が特徴的で、後部はカーブドガラスが用いられた大窓で展望もバッチリですw
展望スペースも食堂になっており、テーブルが存在します。運の良い人は後部のパノラマをみながら食事ができるというわけですね!

定員は22名。一般的な食堂車より少なく、ゆとりがある設計となっています。
実車の室内は金色がふんだんに施された、バブル絶頂期らしいゴージャスな雰囲気となっていました。

ちなみに、内装を手掛けたのは東急百貨店だそうです。
2+1のテーブル配置は北斗星のスシ24形と同じですが、わずか3列の18名のみで、大きな窓と共にそのゆとりを感じることができます。

 

 

また、特徴的なのは個室も存在することで、こちらは定員4名。VIPや小さい子供がいる家族にもぴったりです。

 

 

 

模型の室内はこんな感じです。床面は自作シートで着色してみました。テーブル・椅子も着色したいところですw

ランプシェードも付いてますが、あまりきれいに光りませんw将来的には輝度の高いLEDに交換するなりして対策をしたいところです。

 

外観ですが、厨房側のサイドビューはこんな感じです。やはり食堂部分の大きな窓が目立ちます。少し離れた大窓は個室部分になります。

 

通路側はこんな感じです。他の食堂車同様の高窓で、個室部分まで延びているので車体の半分ほどが高窓になっているのがまた面白いところです。デッキドアのようなドアがありますが、資材搬入用となっているようです。


実車のオシ25 901は現在は埼玉県三郷市のららぽーとに静態保存されています。原則的に車内の公開はしていない様で、まれにイベントなどでみられる程度の様です。

・オハフ25 901

 

 

ワインレッドが一際目を引くラウンジカーでです。形式名だけ見ると最後尾に連結されていそうな車両ですが、展望食堂車を後ろに連結する関係上、緩急設備を持つ中間客車となっていました。これも比較的珍しいケースです。

ゴージャスな内装に反して普通車の「ハ」が付いていますが、当時はロビーカーやサロンカーなどのフリースペースを普通車扱いとしていたためです。近年では「ななつ星in九州」は一等車を示す「イ」を、トワイライト瑞風では新たな車種記号「ラ」を付けていたりしますね。

 

室内にバーカウンターや自動演奏式のピアノが供えられているのが特徴で、オリエント急行客車のバー・サロンカーをオマージュした物だと思われます。

実車のバーカウンター上にはワイングラスを逆さにしたオブジェが取り付けられ、お洒落なイメージを引き立てていました。

窓配置自体は意外と平凡ですが、トイレ・洗面所部分の楕円窓・円窓にハマったステンドグラスが優雅なムードを醸し出しています。

デッキは一箇所ですが、食堂車寄りに車体片側だけドアが付いており、車体左右でドア数が違う珍しい構造になっています。

室内の片隅には電話ボックスが供えられています。

なお、内装のデザインは松屋デパートだそうです。

 

 

模型の室内はこんな感じです。二人がけのテーブルが並び、中央にあるバーカウンターとピアノが目に付きます。

 

サイドビューはこんな感じです。縦長のドア窓とゴージャスな雰囲気の割には窓配置は比較的地味なのがわかります。

トイレの通路部分の楕円窓とステンドグラスは良いアクセントになっていますね。

 

 

反対側はこんな感じ。

逆サイドに比べてドアが一つ少ないことが分かります。トイレ・洗面所部分は小さな丸窓で、やはりステンドグラスが嵌っています。用がなくても見に行きたくなってしまいそうですw

実車はこの写真の様に、外からはレースのカーテンとスリガラスの内窓があり、室内がほとんど見えません。カシオペアやトワイライトエクスプレスのラウンジカーが大きな窓で展望を確保しているのとは対照的です。一説によれば、コンセプトとして外と独立した空間を演出するためとの事ですが、どうなんでしょうねw

 

 さて、オハフ25 901は引退後、オシ25 901と同じく三郷市のららぽーとで静態保存されています。こちらは常時室内展示も行われているようで、休憩所としても使用できる様です。

機会を見つけて見に行きたいものです。

 

・オロネ25 901

 

 

青がベースのツートンカラーの超豪華寝台車です。

デラックススリーバーの愛称を持ち、二人用の個室寝台が3部屋。定員僅か6名の贅沢空間です。

独特の窓配置がただならぬ雰囲気を醸し出していますねw

 

模型の室内はこんな感じです。

 

住居模型の様な風情でもありますねw
 

ビジネスホテルの様な設備のスーペリアツイン(写真左)2部屋と、リビングルームが併設されたエクセレントスイート(写真右)1部屋からなり、各部屋ともバスタブ・トイレ付きのユニットバスを併設しているのが特徴です。勿論日本国内では初の事であり、その後もバスルームを持つ車両はなかなか現れませんでした。いかに意欲的な設備だったか計り知れようと言うものです。

 

スーペリアツインは線路方向にベッドが並ぶ寝室部分と、ソファー・テーブルのあるリビングスペースがあり、間に仕切りはありません。

リビングスペースにはテレビや専用の公衆電話も付いています。登場当時は1989年。携帯電話も普及しておらず、公衆電話はそれなりに有り難い設備だったと言うわけですね。入口付近には小型のクローゼットも付いていました。まさに至れり尽くせりですねw

カラースキームはブルーが主体の落ち着いたものでした。

 

エクセレントスイートはL字形に並んだ寝室とリビングルームからなり、寝室とリビングルームには仕切り扉が存在します。

テレビは寝室とリビングルーム両方に備えられています。いやぁ、贅沢ですねw

リビングには扉が姿見となっている大型クローゼットや専用の公衆電話、向かい合わせのソファー・テーブルの他にも小さなソファーがあります。

寝室は大きなベッドとテレビ。模型では省略されていますがベッドの間に机があります。

こちらのカラースキームはピンクで、差し詰め若いカップル向けといった所でしょうか。今の時代では考えられませんが、当時は若者もそれなりにお金を持っていたのでした。

 

いやー。それにしても、一度乗ってみたかったですね。

 

なお、実車の内装のデザインは高島屋デパートだそうです。

 

客室側の外観はこんな感じです。
窓がすくなく、散らばるような窓配置がいかにも特殊な車両らしいヤバさですねw
寝室の細窓が特徴的です。
「ななつ星in九州」以降のクルーズトレインにも通じるところがあります。
 
通路側の外観です。窓配置はこちらは大人しいというか、整然と8枚の窓が並ぶのみですが、窓越に見えるホテルの廊下を思わせる個室仕切りが上品なムードを醸し出していますね。

屋根上の中央に乗っている白い突起は衛星テレビ用アンテナだそうです。室内のテレビは衛星チャンネルも見られたのですね!

 

さて、オロネ25 901は引退後、江東区で静態保存されていますが、ただの展示や列車ホテルではなく、なんとレストランに変身して営業中です。3部屋の客室は個室の食堂となり、オリエント急行でシェフ経験のある方のフランス料理店になっているうです。

ここも機会を作って行ってみたいところですね!

 

以上で夢空間の紹介は終わりです。

 

長々と続いた車両紹介シリーズもこれで終了です。

 

次回以降は新規入線などもあるので数回の休憩を挟みつつ、北斗星客車の内装加工や、模型での「北斗星」の遊び方などについて書いてみようと思います。