寝台特急「北斗星」の深き沼 その11
毎度ご覧いただきありがとうございます。
長々とご覧いただいている「北斗星の深き沼」シリーズも一番闇の深い所を超え、後半戦に入ってきました。
今回は寝台特急「北斗星」の主役が寝台車とすれば、もう一つの華である食堂車「グランシャリオ」について書いてみたいと思います。
第六章 食堂車「グランシャリオ」
古くから長距離を走る夜行列車と食堂車の関係は深く、戦前では優等寝台車の乗客のみ利用できる優等車両の扱いで上流階級のサロンとなっていたこともあります。戦後においては主に昼行区間の長い長距離列車に連結され、車窓を眺めつつ食事やお酒を楽しむ空間となっていました。小説「阿房列車」などでは昼間は食堂車に入り浸って酒を楽しんでいたという描写が何度かみられます。
厨房には火力の高い石炭レンジが用意され、レストランのシェフが腕を奮ったそうです。しかしながら、その食堂車も時代の変化と共に大衆化し、調理器具も防災のため火力の弱い電気レンジとなって提供できるものも限られてゆき、さらに合理化などでメニューが減らされた上に料理もシンプルなものになっていきました。結果、値段の割には・・・ということになり、食堂車も空席が目立つ様になりつつありました。
そんな中、国鉄末期にテコ入れが行われ、「あさかぜ」などで欧風客車を模した内装を煌びやかなものにするなどの潮流が生まれつつある所で、青函トンネルの開通と分割民営化がやってくることになります。
そんな中、国鉄は青函トンネル開通後に運転を予定している北海道連絡の寝台特急(後の「北斗星」)に備えて、新たな食堂車を用意することにしました。ところが、当時24系の食堂車であるオシ24形に余りが無かったことと、厳しい国鉄の財政状況に鑑みて新製を避けたこと、さらに電車特急用485・489系の食堂車に余りが出ていたことから、国鉄客車としては異例の電車改造の客車、スシ24形500番台が誕生しました。
内装は「あさかぜ」用のオシ24形700番台に準拠した欧風のものとなりましたが、外観はうえの写真の通りで、低い屋根や特急形電車独特の下膨れの車体断面、電車特有のTR69形台車など外観は電車時代の面影を強く残しており、「485系食堂車の北斗星塗装」といった風情になっていました。なお、電車時代には前後両側妻面に簡易運転台がついていましたが、撤去されています。
スシ24形のうち国鉄時代に改造されたのは3両で、いずれもJR北海道に継承されました。民営化直後にJR東日本で3両用意され、その後1989年の定期列車増発により両社で1両ずつ増備されていますが、形式に変更はなく全てスシ24形500番台となり、JR北海道とJR東日本で続番号となりました。
さて、「北斗星」の食堂車は「グランシャリオ」の愛称が付けられ、これまでにないサービス形態となったのが大きな特徴です。
予約制でフランス料理のフルコースを楽しめるようになっており、予め地上で調理しておいた本格的ものを途中で積み込み、車内で味わうことができるサービスとなっていました。また、パブタイムと称してファミレス並のメニューを提供する時間や朝食を提供する時間も設けていました。これにより提供される食事の品質が従来の食堂車に比べて大きく向上し、「グランシャリオ」は常に人気で満員状態となっていました。また、ロイヤルにはこれらの食事をデリバリーするサービスも行われ、豪華寝台列車に恥じないサービスが提供されていました。大抵この手のサービスは尻萎みになることが多いのですが、「北斗星」は運行終了までこのサービス形態を保ち、豪華寝台特急の名前にふさわしいものとなっていました。
以下、各社の車両の詳細について書いて行こうと思います。
・JR北海道
国鉄から引き継いだ3両と追加改造を行った1両の合計で4両が在籍していました。
ナンバーは国鉄引き継ぎ車が501〜503、追加改造車が508となっています。
JR北海道らしく4両所帯にもかかわらず3形態あるのはご愛敬と行ったところでしょうかww
501〜503は「北斗星」運行開始直前に国鉄改造時から軽く仕様変更を受けており、改造直後はテーブル配置が4人掛け+4人掛けに、端部分にソファーという配置だったのが、「北斗星」運行に際してALL4人掛け+2人掛けに改められています。また、外観上はJR北海道「北斗星」のエンブレムが追加され、外観上のワンポイントになっています。
模型の室内の様子です。まだ整備していないので真っ白ですが、実車の室内のカラーは木目調が基本のシックなものになっていて、テーブルランプは赤色のシェードとなっています。
模型でも赤色シェードは再現されていますねw
追加改造された508は基本仕様は同じながら、帯がアルコン帯もどき(縦帯なし)になっているのが異なります。
改造種車の関係で503のみ冷水器部分の屋根に大きなベンチレータが乗っているのが特徴です。また、501〜503は2000年頃に厨房部分の窓が固定化されましたが、508は廃車まで開閉可能なサッシ付きのままでした。
これらの形態の違いをまとめると以下のようになります。
番号 | 帯 | 大型ベンチレータ | 厨房窓(2000頃〜) |
---|---|---|---|
501 | 3本 | 無 | 固定 |
502 | 3本 | 無 | 固定 |
503 | 3本 | 有 | 固定 |
508 | 4本(アルコン帯類似) | 無 | サッシ |
なお、扉とトイレ窓のHゴムはいずれも灰色でした。
改めて外観を見てみましょう。
こちらは通路側です。背の低い屋根に分散クーラーが乗る姿はいかにも特急電車の趣きですねw車体長が通常の24系より短く、電車サイズなのも特徴的です。JR北海道特有のエンブレムがどこか誇らしげですねw
さて、JR北海道のスシ24形500番台は運行当初は1・2号に連結され、1989年の定期三往復化により3・4号の北海道担当編成でも活躍するようになりました。追加改造された508は若干内装の意匠が異なっていましたが501〜503と区別なく使用されました。
1999年の定期2往復化後は主に1・2号と臨時「北斗星」に使用されましたが、2008年の1往復化に伴い運用を失い、4両とも廃車になってしまいました。幸にして解体は逃れ、全車ともミャンマーに旅立っています。
模型はTomixから503を除いた各形態がモデル化されています。旧製品では厨房窓が固定された501,502が、現行製品では厨房窓が原型の501,502がセットに入っています。いずれも比較的入手はしやすいと思われます。508はいわゆる「瞬殺セット」に入っており、入手困難です。KATOからも旧製品で501が製品化されており、運行初期をプロトタイプとしているため厨房窓はサッシ付きです。Hゴムは模型も実車もいずれも灰色です。よかったよかったw
・JR東日本
JR東日本のスシ24形500番台はいずれも分割民営化後の登場で、504〜506が運行開始当初から、507が1989年に追加で登場しています。JR東日本らしく4両とも比較的仕様は揃っていますが、504のみ種車の関係で冷水器部分の屋根に大型ベンチレータが載っています。
厨房部分の窓はJR東日本車は全車とも1つ埋められて2つになっているのが特徴となっている他、冷水器部分の車体側面のダクトは埋められています。
外観上はシンプルな3本帯で、東日本車らしくエンブレムはありません。
室内は欧風としつつもパールシルバーを基調とした明るい雰囲気で、重厚な雰囲気のJR北海道車とは趣きが異なっています。テーブルに載っているランプシェードは白色で、改造当初は傘状のものでしたが、後年スタンド状のものに変わっているようです。
JR東日本車の通路側の外観です。
こちらは厨房側です。厨房窓が2つになっているのが大きな特徴です。北海道車とは違い、最後までサッシ付きでした。
なお、Hゴムについては資材搬入扉のものが504だけ灰色であとは黒。従業員用トイレ窓(車端の円窓)は全て灰色だったようです。
JR東日本のスシ24形500番台は運行開始当初は5・6号。1989年からは3・4号の東日本編成でも活躍しました。追加改造された507は506までと仕様が同じで、当然ながら混用されました。1999年の二往復化後は3・4号で、2008年の一往復化後も引き続き使用されました。そしてそのまま2015年夏の運行終了を迎え、4両ともその後廃車になりました。
一部車両は解体されたもののかろうじて504は解体を逃れ、川口市内で静態保存されており、今でも食堂として営業しています。
この手の食堂は比較的短命であることが多いのですが、1日でも長く生き延びて欲しいと祈るばかりです。
模型の方は、Tomixから505〜507については各種「東日本仕様」セット及び「混成編成」「さよなら」セットに含まれており、比較的入手しやすい状態です。ただし、トイレ窓のHゴムは黒のようです。惜しいw まぁ、メーカーにここまで細かく再現しろというのは酷ですね。細かいことに、「さよならセット」ではランプシェードの形を変更しています。なかなかやりますね。504については今年8月発売予定のセットに含まれる事がアナウンスされています。Tomixの「北斗星」にかける情熱を感じさせますねw
KATOの方からは505が「DX編成セット」に含まれる形でモデル化されています。Tomixと同様、Hゴムは全て黒です。気になる方は色差しすると良いでしょう。
今回はここでおしまいです。
次回は「ソロ」「デュエット」について書いてみる予定です。