入線してきた2つの「踊り子」 | 夜汽車の汽笛への憧情

入線してきた2つの「踊り子」

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北斗星シリーズ増備の合間ではありますが、他に入線してきた車両もいます。

 

JR東日本185系「踊り子」と、同じくJR東日本の251系「スーパービュー踊り子」です!

 



251系はJR東日本がバブル期に作った「本気の観光特急用電車」で、「乗ったらそこは伊豆」をコンセプトとし、当時流行りだった全車ハイデッカーor2階建の、グリーン車を2両連結した堂々の10両編成でとなっていました。



グリーン車は2階建となっており、伊豆急下田寄りに連結されていました。先頭部には展望座席を設けた他、階下に個室や簡易な食事調製機能をもつサロン室まで存在する、ゴージャスな仕様となっていました。




普通車の座席は登場当初は、一般客向けの「カスタムユニット」が特注の回転式のロマンスシート、グループ客向けの「グループユニット」がセミコンパートメントタイプの大型ボックスシートでしたが、いずれもリクライニングしないのが不評で後年一般的なリクライニングシートに交換されています。「カスタムユニット」のシートピッチは1000mmで、従来の特急型電車よりゆとりのあるものになっていました。


東京よりの先頭車も2階建構造となっていましたが、1階は子供向けのキッズルームとなっていて、小さい子供にも好評でした。余談ですが、自分の子供も幼児の頃に利用しており、すっかり気に入った様子でした。

大きなガラス張りの窓は展望も良く、見栄えも十分な姿で東京口を走る特急列車としても貫禄十分な出で立ちでした。性能的には211系をベースとした界磁添加励磁制御+MT61モーターという当時としてはオーソドックスなもので、最高速度も120km/hと当時の特急型としては十分なものとなっていました。また、モーターはMT61の中でも内扇型という低騒音タイプが限定使用されていて、静粛性もバッチリで特急型に相応しいものとなっていました。

一方で分割民営化で特急型とはいえエコロジーを意識して軽量化も意識した車体となっていたためか、潮風を受ける伊豆の海岸線を走っていたこともあって末期は車体の腐食も深刻で、残念ながら今年の3月に惜しまれつつも先輩の185系よりも早く引退してしまいました。また、これにより「スーパービュー踊り子」という列車自体も廃止となりました。後継は「サフィール踊り子」ということになっていますが、実態は全車グリーン車の「サフィール踊り子」を新規設定した上で、スーパービュー踊り子はE257系で置き換えという形になっています。

なお、引退後の251系は4編成のうちで3編成はすでに解体され、残り1編成も解体が始まっており、残念ながら保存車両があるかどうかは微妙なところになっています。

 


一方、通常の「踊り子」として活躍する185系は国鉄末期に近い昭和56年登場の大ベテランで、もう間も無く40才を迎える老兵です。元々急行型電車として設計されていたものが営業上の理由で特急型となった曰くのある電車でもあり、従来の急行型同様、普通列車にも使用できる様に1m幅nの広いドアを前後2箇所に備え、窓も開くようになっています。室内は当初リクライニングのない転換クロスシートとなっており、従来のボックスシートだった急行型からすれば十分に「進化形」だったのですが、特急型となってしまったばかりに当時特急型電車は簡易リクライニングシートが標準となっていたことから、どうしても見劣りするものとなってしまい、「遜色特急」「ぼったくり特急」などと汚名を被せられることになってしまいました。(これに先立って登場した関西の新快速用の117系と同じシートだったことも、余計にこの評価に拍車をかけることになってしまいました。)

後年一般的なリクライニングシートに交換され、ようやく特急型らしい面目が保てる様になりました。


なお、流石に急行型電車並みの設備で通常の特急料金をとるのは気を咎めたのか、185系「踊り子」運転開始に伴って従来の特急料金より若干安価なB特急料金が設定されています。この料金体系は後に登場する他の185系使用列車(「なすの」「草津」「あかぎ」など)にも適用されました。

 

ところで、183系までの国鉄特急型電車といえば全国で使用できることを前提とした汎用的な設計となっていましたが、185系は走行線区を意識して設計した転換期の電車でもあります。

従来のクリームと赤のツートンカラーである「特急色」を採用せず、ホワイトのボディーに斜めの緑ストライプをあしらったデザインは新鮮で、私鉄特急の様な車体デザインと共に国鉄車両に新たな風をもたらしました。


走行線区に合わせた設計は足回りにも影響を及ぼしており、ラッシュ時に多数走る普通列車の加減速に合わせられる様、113系と同じギア比を採用して加減速重視の仕様となった代わり、やはり元々急行型として設計していたこともあって最高速度は110km/hに抑えられていました。もっとも、当時の東海道本線自体が最高速度110km/hとなっていて、普通列車は最高でも113系の100km/hだったので、東海道本線東京口で使うにはむしろ十分な性能と言って良いものでした。ただ、時代の流れというのは残酷で、今では技術の進歩で普通列車用の電車(E231系、E233系)が120km/hを出せる様になり、足回りとしてもすっかり見劣りするものになってしまいました。



メカニックはオーソドックスな抵抗制御にMT54モーターの組み合わせという堅牢なもので、最高速度を犠牲とした近郊型電車並の加減速性能もうまく「東海道本線東京口」の路線状況にハマっており、このことが約40年間も第一線で活躍できた要因の一つなのではないかと思います。一方で、当時標準だったMT54モーターは冷却ファンが大きな音を立てる「爆音」モーターとしても有名で、相対的に静かなモーターの増えた今となっては、「特急にもかかわらず一際大きな爆音を立てて走る列車」になってしまっています。

 

様々なラッキーな要因が重なって東海道本線東京口の顔として長期間君臨してきた185系ですが既に何本かは引退済みで、残りも2021年に中央本線からコンバートされたE257系に置き換わってついに「踊り子」から引退を迎えることになりました。

国鉄末期の頑丈な設計が功を奏してか、潮風を受ける伊豆の海岸線を走り続けたにもかかわらず車体の劣化はあまり見られず、先に引退した後輩の251系よりも綺麗な車体を今でも保っています。また、一時は塗装変更が行われたものの、現在は全車が登場時の斜めストライプ塗装に復刻されており、数多な在来線特急型電車が末期には落ちぶれた姿になっていく中で、185系はグリーン車2両を挟んだ15両の長大編成も健在で、登場時と変わらぬ堂々とした姿でエンディングを迎えられるというのは、なかなか凄いことなのかもしれません。

 


模型はいずれも今年発売・再生産されたTomix製品です。
251系は全車室内灯付の豪華仕様。
値段もそれなりで財布は痛かったですが、プロポーション・ディテールともに良く、さすが最近のTomix製品と言ったところです。


185系は長年どのメーカーも古い設計の製品の再生産ばかりだったところ、Tomixが昨年フルリニューアルして発売した製品です。185系としてはようやく現代レベルの製品が登場したこともあり、あっと言う間に売り切れになりました。再生産スパンの長い同社としては珍しく、今年8月に再生産してくれたので入手できました。さすがに今時の製品らしく素晴らしいの一言です。

251系は引退、185系も先が見えていますが、我が家では長期にわたって活躍してくれることでしょう。

今回の記事はここまで。
次回は再び北斗星に戻りますw