Yokohama Navy Blue なイカした奴がやってきた | 夜汽車の汽笛への憧情

Yokohama Navy Blue なイカした奴がやってきた

毎度ご覧いただきありがとうございます。

 

前回に引き続き、新しい仲間の紹介です。

 

今回購入したのは完全に衝動買いですwwww

 

 

横浜の地方大手私鉄に過ぎなかった相模鉄道は、昨年11月30日にJR線埼京線との相互直通運転を開始ししました。

JRは埼京線用のE233系7000番台を7編成増備。一方、相鉄は「Yokohama Navy Blue」(以下YNB色)と呼ばれる光沢の入った渋い濃紺のボディーに上質感漂う車内、強烈な印象を残すシャープな前面形状の12000系を擁して副都心の新宿駅にデビューすることになりました。

それを受けて、今年夏にTomixから相鉄12000系が早速発売されました。



・・・・と言うわけで、その12000系が入線・・・・・・となりませんでしたww

 

実は予期せぬ「北斗星大増殖プロジェクト」が発動して予算が枯渇しまった上、「JRデビューはしたものの大手とはいえ横浜のローカル私鉄に過ぎない相鉄の電車がいきなり消えることはないだろう・・・・」などとタカを括っているうちに市場からあっという間に市場から消えてしまいました、、、。

どうやら来年5月に再生産があるようなので、今度こそは入手しようと思っています。

 

と言うわけで、今回入線したのは12000系ではなく、その先輩でありYNBカラーの先輩でもある9000系リニューアル車です。


っと、コレは実車ですねw

12000系を買いそびれてしまったことと、相鉄横浜駅すぐ近くにある行きつけの鉄道模型店の入り口のところに飾ってあったのを見て欲しくなってしまい、つい手を出してしまいましたw

 


一見上品なスタイルのこの電車、実はかなり特殊仕様バリバリなユニークな電車なのですw

 

さて、この9000系。いろいろな意味で「異例」の電車です。

というのも、従来の相鉄電車自体の特異性と、その相鉄の中で特異な存在であるため、両方の特異性を兼ねた存在であるからです。


登場は1993年。当時相鉄は8000系を増備していましたが、なぜかその8000系の増備と並行する形で、当時老朽化していた6000系を置き換えると言う名目で登場した電車です。


1993年から2001年にかけて7編成が製造され、主役と言うよりは名脇役と言う立ち位置でした。

当時、基本的に相鉄の新造車は日立製となっていて、電装品も日立製で統一されていました。一方、改造車については地元である東急車輛(当時。現在の総合車両製作所)で担当していて、電装品も東洋電機のものを使用していました。

ところが、この9000系は新造車にもかかわらず東急車輛製で、電装品も東洋電機製となりました。

また、基本仕様は8000系をベースとしているものの、その性能も8000系と微妙に異なっています。足回りは前出の通り東洋電機製のものとなっており、当時多くの私鉄で採用されていたヒートパイプ冷却式で1C8MのGTO-VVVFインバータ。電動機は同社の5000系で使用していたものとほぼ同じ180kwのTDK-6140Aとなっています。それでいながら6M4Tの編成を組む相鉄一番のハイパワー編成となり、相鉄線の運転最高速度は100km/hにもかかわらず、設計最高速度は8000系より10km/h高い120km/hとなっていました。色々謎ですねw

外観もそれまでの相鉄車両からすると異例でした。

旧型車を改造した2100系以降、相鉄はアルミ車体となっていましたが、いずれもアルミの地肌を生かした銀色ベースの車体色となっていました。それが、この9000系では完全に塗装されており、ホワイトをベースに当時の相鉄のアルミ車のシンボルカラーとなっていた赤い帯が巻かれ、先頭部側面は相鉄の「S」を象った塗り分けとなっていました。

また、窓サッシもそれまでの相鉄車は車体より露出したアルミのサッシとなっていましたが、9000系は車体に埋まるような形の黒色のサッシとなっています。

屋根上機器についても、8000系までは集中式冷房機だったのが、9000系は関西私鉄でみられるような一体がたキセの分散型冷房機を搭載しています。

ここまででも相鉄としては「異例」の電車だったことがお分かりになるでしょう。

おそらくですが、従来同社の電車と一線を画した、挑戦作だったのだと思います。

 

さて、相鉄としては異例づくしの9000系ですが、相鉄の電車自体が他社と比べると独特な仕様となっており、それについてはちゃんと受け継がれているのが面白いところです。

一番大きな特徴はその台車で、M車、T車にかかわらずディスクブレーキを使用しており、そのブレーキディスクが外側に露出しているのが特徴です。


写真は8000系のものですが、9000系も例に漏れずこの写真の様にディスクブレーキが露出した台車を使用しています。

また、駆動方式に直角カルダンを採用しているのも他社にはない特徴です。

通常はモーターが車輪に並行に装架されていますが、相鉄ではモーターを車輪と直角(線路方向)に装架し、傘歯歯車を通じて動力を伝える直角カルダンとなっていました。

これはカルダン駆動初期に駆動装置を狭い軌間の台車に装備するため採用されていた方式で、カルダン駆動黎明期には多くみられたものの、メカが複雑になることから狭軌用並行カルダン駆動装置が発明されてからはモノレールなどの特殊な例以外は採用されなくなっていた方式ですが、相鉄では初代5000系以来なぜか頑なに直角カルダンを採用し、9000系でも引き継いでいました。三相交流電動機を使用したVVVFインバータ制御に直角カルダン駆動と言う組み合わせは、普通鉄道では全国でも相鉄のみです。このため、走行音は他社ではみられない非常に独特なもので、吊り掛け駆動もかくやと言うほどの低音で大きな唸りを出すのが特徴です。(抵抗制御の7000系までの直流電動機時代はむしろ静かであったはずなのですが、交流電動機になってなぜこんな大音量で唸るようになったのかは謎ですw)

他に相鉄独自の設備といえばやはりパワーウインドウでしょう。

初代5000系の車体改造車である5100系から客窓にボタン式のパワーウインドウを採用し、ボタン操作で窓の開閉ができるのが特徴です。乗用車では標準でみられる装備ですが、電車での採用例はこの相鉄以外ではごく僅かな例しか見られません。しかし、9000系は例に漏れずこのパワーウインドウを採用していました。

他にユニークなものといえば、車内に姿見用の小さな鏡がついていることで、9000系にもしっかり取り付けられています。この鏡は昭和30年代登場の初代5000系に「横浜に買い物に出るのに身だしなみを整えられるように」と取り付けられた粋なもので、JR標準仕様となった10000系が登場するまで取り付けられていたものでした。なおこの鏡は、相鉄では久々の独自設計となった新型の20000系で復活し、JR車がベースとなった12000系でも取り付けられ、相鉄車両のアイデンティティーの一つとなっています。

また、5号車と8号車にあるボックスシートも特筆すべき点でしょうか。新7000系の7755x10(通常、本ブログでもJRのような編成番号がない場合、特定の編成を表す際には[先頭車車番]Fと表していますが、本稿では相鉄の公式の表記に合わせ、編成番号を[横浜寄り先頭車の車番]x[編成両数]で表します。)から突如として登場したボックスシートですが、8000系で正式採用され、9000系でも導入されました。これは歴史は浅いものの相鉄車独自の特徴と言って良いでしょう。7755x10が登場した当時、東急9000系や営団9000系(現メトロ9000系)、都営6300形などで車端部にボックスシートを配置するケースが出ていましたが、ドア間にボックスシートを配置し、複数形式に渡って配置したのは相鉄のみでした。

さて、9000系は他にない特徴も一つ持っています。補助電源は通常、最近の電車ではサイリスタインバータを使用していますが、9000系はコストダウンのため当時置き換えで廃車になっていた旧6000系の電動発電機を再利用しています。このため、9000系が駅に停まっていると、今時のインバータ電車でありながらおよそ似つかわしくない、「キーン」と言う高音で懐かしさすら感じられるの電動発電機の音が聞こえてきます。

 

ところで、9000系はわずか7本ながら8年間に渡って製造されており、製造時期毎に細かなバリエーションが存在します。9701x10と9702x10は側面の表示器が当時の8000系と同じく幕式で、行先と種別が分かれたものとなっていました。それが、9703x10から三色LEDに変更されて種別・行先は一体型となっています。

パンタグラフは9705x10までは登場時は一般的な菱形のパンタグラフを使用しており、9706x10編成以降及び9705x10までのリニューアル後は今の電車では標準的なシングルアームパンタになっています。このため、パンタ周りの配置も微妙に異なっていて、菱形パンタを積んでいた9705x10編成までと製造時からシングルアームパンタを積んだ9706x10編成以降では避雷器の位置や取り付けピッチが異なっているようです。なお、相鉄は7000系まで旧型国電由来でラーメン構造のPS13形パンタグラフを使用していることでも有名でしたが、この9000系の9702x10編成にも一時期、一部車両におおよそインバータ電車に似合わないPS13が載っていた事がありました。これも相鉄らしい面白いエピソードですねw

室内の表示装置は9703x10とそれ以降で異なっていて、9703x10までは車内妻面に大型のLED表示装置が、9704x10以降は他社でよく見られたドア上の鴨居部分にLED表示装置が取り付けられました。

 

さて、謎に高性能の9000系ですが、登場以降は他形式と変わる事なく、各停から特急まで全般的に使用されていました。

一つ目の大きな転換点となったのは塗装変更でしょうか。それまで相鉄は形式毎に異なる塗装・デザインを使用していましたが、2007年から全形式で同一の塗装とすることになり、薄いグレーをベースとして窓上部に水色の帯、扉裾部分にオレンジの帯に変更されました。この変更は当初全車を対象としていましたが、神奈川東部方面線計画が具体化したことと相鉄100周年を絡めて「相鉄デザインブランドアッププロジェクト」が立ち上がり、塗装をYNB色にすることになったため、統一色化は結果的に全車に及ばず、9705x10はこの統一デザイン塗装になることはありませんでした。

 

二つ目の大きな変化は走行機器の更新になります。JR直通運転が見え始めた2013年。保安装置(ATSや無線)をJRに合わせたATS-P型とデジタル無線に変更することになり、従来の東洋電機製のインバータ装置は誘導障害対応は必要になる事がわかりました。加えて、当時相鉄は8000系までの日立製、10000系以降の三菱製と3社のインバータが存在して保守が煩雑になりつつあったことから、8000系と9000系の機器更新を行って部品の共通化を図ることになりました。そこで、誘導障害対応が必要な9000系は全車を対象にVVVFインバータが変更され、2014年までに日立製のIGBT素子を使用したインバータに変更されました。これに伴って走行音も変化が出て、日立のIGBT2レベルインバータの変調音+直角カルダンと言うこれまた新しい組み合わせの走行音の誕生になりましたw

余談ですが、8000系のインバータ装置はそれほど急を要していないことからか機器更新はゆっくりとしたペースで進んでおり、現在でも未更新の車両が存在しています。

 

三つ目の大きな転機が「相鉄デザインブランドアッププロジェクト」を具現化すべく行われたリニューアル工事です。

改めてこのプロジェクトについて軽く述べますと、相鉄100周年とJR線及び東急線への乗り入れ計画が具体化したことに絡んで立ち上がったもので、相鉄の全ての電車を「走る広告塔」と見立てて横浜の海をイメージした「Yokohama Navy Blue」と呼ばれる光沢のある紺色に仕立てた上、車内のスキームも統一するプロジェクトです。

この計画に沿って、車体塗装をYNB色に変更するだけでなく内装についても大幅に手を入れることになりました。

室内の改装項目は多岐に渡りますが、大きな所は

・室内色をライトグレーを基調としたカラーに統一。優先席のモケットカラーを変更。

・客用ドア上にLCDディスプレイ案内装置を設置。

・つり革を独自開発の卵形のものに変更。

・照明のLED、間接照明化。時間によって色温度を変化し、昼間は昼光色、夜間は温かみのある電球色に切り替える機構を搭載。

となっています。9000系以前の伝統になっていた車内の鏡については形状を変更の上維持されました。

いずれも相鉄車両の新しいブランドイメージのテストケースと言うこともあってかなり気合の入った改造内容となっておりなり、これらは意匠共々その後新造される直通対応の20000系や12000系に受け継がれました。

なお、5号車と8号車に存在しているボックスシートについても形状が変更されたうえ、本革使用の豪華なものになっています。

外装の方はYNBカラーになっただけでなく、車番ロゴの変更が行われたうえ、前面形状も変更されて、従来運転台下にあったヘッドライトが上部(元々急行灯のあった場所)に移設されています。また、表示器類は幕式あるいは3色LEDだったものが、フルカラーLEDに交換され、前面の表示器は種別・行先・運行番号の表示が一体化されました。

このリニューアル工事は9702〜9707x10を対象として全車完了していますが、9701x10だけはリニューアル対象から外れて塗装はいわゆる「統一色」のままで、表示器類も幕式のまま残っていました。理由は不明ですがこの編成だけは20000系による置き換えの対象となっており、機器未更新の8000系が残っているにもかかわらず甲種輸送された20106x10と入れ替わる形で先月末(2020/11/30)に運用離脱し、12/2には早くも廃車となってしまいました。

 

いやぁ、だいぶ熱く語ってしまいましたが、模型の方を見てみましょう。

 




模型の方はマイクロエース製品です。

同社の製品らしく発色や印刷は非常に綺麗です。プロポーション・ディテールともなかなかよくできており、「相鉄9000系らしさ」がよく再現されています。

 



ちょっと残念なのは先頭車の屋根のループアンテナ撤去跡は省略されている所。比較的同社はこう言った部分はしっかり作る事が多いので意外な気もします。

転落防止幌が付いているのはマイクロ製品らしい所。これについては他社では省略されているのでマイクロ製品のアドバンテージといえそうですねw

 

特徴あるブレーキディスクが露出した台車もしっかり表現されています。KATOの東急7000系のようなブレーキディスク回るギミックはないですが、十分だと思います。

実車の台車もブレーキディスクの銀色が結構目立つので銀色に色差ししてみました。なかなか効果がありますね。




パンタグラフは意外と繊細な表現で、下のアームの外側の支柱が金属製となっていて可動式になっています。ひょっとするとKATOやTomixよりもいいかもしれません。パンタ周りの配管の表現はさすがマイクロエース。ヒューズの立ち上がりケーブルまでしっかり表現してきています。

 



モハ9100形に搭載される日立のIGBTインバータユニットです。しっかり表現してきています。なかなかやりますねw

ちなみにマイクロエースからは旧塗装車も製品化していますが、そちらはちゃんとオリジナルの東洋GTOインバータが再現されているようです。某社製品だと省略されてしまいそうな作り分けですが、こう言うところは細かいですねw

 



モハ9200形の床下にはちゃんと旧6000系由来のMGが再現されてます。実車同様のアンバランスさがいいですねw


5・8号車は車内のボックスシートがちゃんと表現されています。なかなか抜かりないですねw

 


動力車の床下機器は浅いレリーフ表現です。この辺りは大手2社に比べるとビハインドですねw

とは言え、動力自体の性能は昔のマイクロエース製品では考えられないくらい良くなっており、スムーズに走ってくれます。昔は安定走行するまで何周か全開走行して慣らす必要があったり、潤滑用の油が固化したり、通電用の銅板が錆びて動かなくなったり、ダイキャストが崩壊したりしたのを考えると感無量ですw

模型店の人に聞いても「故障の話を聞かなくなった」との事なので、頑張って改良したのでしょうね。

 


9号車には弱冷房車ステッカーも印刷されています。さすがですねw

なお、このステッカーはYNB車としては2016年頃までのデザインで、今は12000系に準じたシンプルなものに変更されています。(非YNB車は今でもこのタイプです)

これについては世田谷車両さんのインレタを仕入れたので、

 



このように現行のものに変えてみました。

 

10号車(海老名寄り先頭車)は女性専用車になっています。

相鉄の電車は執拗なまでに女性専用車であることをアピールするかのように、ドアにまで女性専用車ステッカーが貼ってあるのですが・・・・

 


このように頑張ってみました。

付属のステッカを透明プラ板に貼り、実車同様の裏貼りにしています。

グリーンガラスになっているわけではないので、正直無駄な努力という気がしなくもないですがww

それにしても、かなり賑やかな印象になりました。施工前と比べると段違いですねw

 

 


最後に相鉄並び。大先輩にあたる新6000系との夢のツーショットです。相鉄車両のデザインの進化が伺えますねw

9000系自体は新6000系が引退する前に登場しているので、9000系原色車との並びは実際にあったはずですが、流石にYNBカラーとなると模型ならではの組み合わせになります。余談ながら、新6000系を買ったのは随分昔なのでドアステッカーなどの整備はしていませんが(買った当時はその手のパーツも売られておらず、自分自身もディテールアップする技術が無かったため)、折を見てこの辺りも整備しましょうかね。

 

我が家に落下傘の様に発生した相鉄シリーズですが、元々相鉄の電車は好きですので、そのうち現在の主力で今の相鉄では「一番相鉄らしい」8000系や、埼京線から乗り入れてくるE233-7000も含めて充実させていったら面白いかなと思ってます。

 

今回はこれにて終了です。

次回は北斗星シリーズに戻りますw